雲と水面

極超小型サイクロトロン


PIXE分析において軽元素から重元素までの検出に適切な照射イオン(プロトン)の
エネルギーはEp=2.5〜4.0MeVであることが多くの研究結果から提唱されている。
そのため、現在までに用いられているイオン加速器は静電加速器である。
この加速器は概に成熟技術であり、多く実用されているが、非常に大型で、高価で
あり、これをイオン源として分析システムに組み入れて運用することは問題が多く、
これが折角の優れた特性と実用性をもつPIXE分析実用化と普及を妨げる要因と
なっていると考える。
我々は、従来その使用目的から、主として出力エネルギーがEp=10MeV以上で
活躍しているサイクロトロンは出力エネルギーに対応して原理的に小型化できるこ
とに着目し、これを静電加速器の領域まで引き下げて、静電加速器に比べて、大幅
な小型化、低価格化、安定化を試みてきた。そして、PIXE分析用に供することを目的
に、出力エネルギーEp=3.0MeVの極超小型サイクロトロンを開発することに成功した。


設計の仕様

前記開発目的を達成すべく、下記の諸点を設計の主眼とした。
(1)出力イオンは、PIXE分析にプロトン、RBS用にHeイオンとする。
(2)固定エネルギーとする。プロトン、Heともに3.0MeV。       
(3)在来のサイクロトロンと比べると、初期加速の段階でイオンを取り
出すことになるので、軌道の安定上AVF方式とする。
(4)主電磁石のポールギャップはギリギリまで狭くして、小型化と  
省エネ化をはかる。
(5)イオン源はタテ型となるので、磁極中心部とイオン出発位置につい
て工夫をする。

メール

イオン加速器株式会社
雲と水面



表−1 極超小型サイクロトロンの仕様






加速粒子 プロトン Heイオン
イオンエネルギー  
固定エネルギー
3.0MeV  3.0MeV 
出力電流 10μA 5μA

状 
ポール直径 φ0.39
電磁石幅×厚さ 0.9×0.65m
電磁石重量 2ton
共振器長さ 1.5m


ポール半径 195mm
セクター数
セクター角 32°
58°
ポールギャップ 22mm
52mm
平均磁場 1.7 Tesla
ビーム取出し半径 147mm


ディー 2−ディー
角度 52°
周波数 51.7MHz



電磁コイル 12KVA
FRシステム 5KVA
その他 7KVA
24KVA

試作機の仕様を表−1にまとめて示すが、主電磁石は0.9m×0.65mの
角型で、全幅は今回の設計では共振器の長さに支配されて1.5mとなった。
所要電力はすべてを含めて24KVA以下である。

あらためて、サイクロトロン開発に技術指導をいただいてる理化学研究所サイ
クロトロン研究室の方々に感謝の意を表します。

安全性について

 この極超小型サイクロトロンのイオンエネルギーは核反応の起きないレベルの
プロトン3.0MeVで放射性物質はできません。